イモガイの仲間

イモガイの仲間は肉食巻貝の一種で、強い毒を持つ種がよく知られています。
強い毒を持つのは主に魚を捕食する種であるといわれます。
魚を麻痺させる神経毒は人間にも有効だからです。

しかし、貝を食べるタガヤサンミナシという種類も強い毒があるとされています。

イモガイの毒は食べたら中毒になる、なんて生易しいものではありません。

巻貝の歯である“歯舌”と呼ばれる器官が変化して、矢のようになっています。
この矢に猛毒があり、これを獲物や敵に撃ち込むことで攻撃してきます。
積極的に毒を武器として用いるという厄介なパターンです。

写真にも写っている長く伸びる吻部、これをゆっくりと伸ばして毒矢を発射。
麻痺毒なので体の硬直、呼吸困難、心臓麻痺などを引き起こします。

その毒性の強さ。

イモガイの仲間のアンボイナガイの場合、一匹で30人殺せるといわれます。
アンボイナガイは日本にもいる貝で、沖縄では普通に生息しているほか和歌山でも発見例があるようです。

美しい暗殺者

普通の人は、まさか貝が毒矢を発射して攻撃してくるとは思いもよりません。
しかも、イモガイ類の貝殻はとてもキレイなのです(実際にコレクターもいます)。
貝殻だと思って採集し、それが実は生きたイモガイだったなんてことも。

毒矢の威力はすさまじく、ビニール袋やウエットスーツ、軍手なども貫通します。
刺された直後は痛みがなく、本人も気づかないことが多いです。

しかし、やがて激痛と共に息切れや動悸、麻痺がはじまり、
撃たれた人の70%が死に至ります。
毒を浄化する血清も存在しませんので、刺されたら毒が体の中で代謝されて抜けるまで、
ひたすら耐えなければなりません。

応急処置として、刺された場所より心臓に近い部分を紐で縛り、毒を吸い出します。
海の中にいると筋肉が麻痺しておぼれてしまいますので、速やかに陸地に移動します。

そのうち確実に意識が飛びますので、周りの人は心肺蘇生に勤めてください。
血清がないといっても救命措置のプロがいるので救急車は呼んでください。

色々なイモガイ

アンボイナガイ

単に「アンボイナ」とも呼ばれます。
最凶のイモガイ。
上に書いたイモガイの数々の伝説は
アンボイナが作り出したもの。

つまり、大体こいつのせい。

タガヤサンミナシ

貝を食べるイモガイで、こいつの毒も強力。
アンボイナと同じく暖かい海に生息しており、
沖縄、高知、和歌山などで出くわすことがあります。