コウイカの仲間

コウイカの仲間は、その名のとおり甲羅(貝殻)を持っているイカです。
どこに甲羅があるのかというと、胴体部の外套膜(いわゆる皮膚)に埋没しています。
なので、外からは見ることが出来ません。
「イカの骨」として薬用にされたり、貝殻マニアのコレクションになっていたりします。


【撮影】2014.1鳥羽水族館 【撮影者】南波瑛人

元々イカやタコの仲間には甲羅があり、有名なものではアンモナイトやオウムガイなどがその形態を持っています。
イカやタコは貝殻を退化させることで高い機動性を得た生き物ですので、
つまるところ、コウイカの仲間は原始的な形態を保っているとも言えるわけです。

痕跡器官が目立つとはいえ、“原始的なイカか?”と問われれば疑問符がつきます。
というのも、軟体動物の中でもとりわけ頭が良いといわれているからです。
視覚に優れ、体の色を周囲に合わせて変化させ、時に巧みに擬態して狡猾に獲物を襲います。
メスを獲得する為にオス同士で争ったり、パートナーと仲むつまじい様子を覗かせたりと、
その知能を伺える生態が沢山あります。

脅威のカメラ性能!

このにくめない顔!とても愛嬌があると思いませんか?

イカの目は人間とは違って皮膚が変化したもの。
(ちなみに人間の目は脳が変化したもの)
由来は違いますが似たような形状の眼を獲得していて、それどころか哺乳類の目よりも数段性能の良い構造なのだとか。

【撮影】2014.1鳥羽水族館 【撮影者】南波瑛人

コウイカの仲間は、生まれる前、つまり卵の中にいる時点で眼は発達しており、
透明な殻の中から外界を観察しているようです。
実は卵の中から外の世界を見て、獲物の種類を覚えているのです。
卵の近くをカニがたくさん通っていた場合、生まれた子供はカニを優先して狙うという実験結果があります。
“卵の段階でより目にする頻度が高いもの”=“沢山いるため狙いやすい獲物”
ということを学習するのでしょう。

コウイカの仲間、コブシメの場合、
初夏に卵から孵った1センチほどの稚イカは、冬には50センチに成長します。

変身!

とても眼が良いコウイカの仲間ですが、先に触れたように周囲にあわせて体の色を変化させることが出来ます。
時には岩に擬態したり、砂地に溶け込んだりするのはもちろん、
水に差し込んで揺らめく太陽光や、影の動きに似せて、ゆらゆらとめまぐるしく模様を変化させたりします。

【撮影】2010.9美ら海水族館 【撮影者】南波瑛人

写真の個体は同じ個体で、同じ日に撮影したものです。
ほんの数秒の間に大きく色が変化しているのがわかりますね。

繁殖の際に、オスはとても器用な変身の仕方をすることがあります。
メスのほうには求愛色を出しつつ、ライバルのオスのほうには警告色を向ける、
つまり体の右半分と左半分でまったく色を変えてしまうなんて芸当をしてみせるのです。
喧嘩の際には真っ黒に体を染め上げて威嚇するなど、その変身のレパートリーは底が知れません。

色々なコウイカ

コブシメ

日本近海では最大のコウイカです。
初夏に卵から1cmほどの稚イカになり、
冬には50cm程度まで成長します。
寿命は1〜2年で、産卵を経験した個体はすぐに死んでしまいます。

食用になりますが、
「昆布締め」とはまったく関係ありません。